頚椎症(頚椎症性脊髄症、頚椎症性神経根症)
頚椎症性脊髄症は、頚椎内を通る脊髄が圧迫されることによって痛みや神経症状が生じる疾患です。中・高齢者に多くみられ、ほとんどは加齢に伴って進行します。骨や椎間板、靭帯が変性することにより頚椎の脊柱管を通る脊髄が圧迫され、さまざまな症状が現れてきます。同様に変性部分が脊髄でなく、神経根を圧迫している場合は、頚椎症性神経根症と呼ばれます。また、日本人は脊柱管が欧米人と較べて小さいため、脊髄症や神経根症が生じやすいと言われています。
主な症状としては、肩から腕にかけての痛み、手指のしびれがよく出現します。特に、首を後ろに反らした時に、痛みを強く感じる傾向があります。頚椎症性神経根症の場合、脊髄から枝分かれして上肢へと伸びる神経根の部分が圧迫されるので、症状が強く出ることもあります。
頚椎症の治療に関しては、まず消炎鎮痛剤による薬物療法や装具を着用する保存的治療を行います。しかし、日常生活に大きな支障をきたすようなときは、手術がお勧めです。放置していると、足がもつれたり下肢が麻痺したりすることにより、転倒や転落を引き起こし、症状が悪化してしまうケースもあります。そのため、進行度合いによっては早期のうちに手術を検討することもあります。
頚椎椎間板ヘルニア
頚椎椎間板ヘルニアは、脊椎上部の首の部分にある椎間板が変性し、本来の場所からはみ出してしまう疾患です。骨棘形成などの椎体変形を来たしている場合も少なくなく、これらも相まって脊柱管などの狭窄を起こすことがあります。原因に関しては、加齢や継続的な運動負荷による変形が大半です。
頚椎椎間板ヘルニアになると、首や肩に生じる痛み、首などのしびれ、握力の低下、腕の感覚鈍麻、手が思うように動かなくなる、足がもつれる、歩行が困難になるといった様々な症状が見られるようになります。
治療に関してですが、基本的には一度変形してしまった頚椎を元の形に戻すことはできません。そのため、痛みを緩和させるための消炎鎮痛剤の処方、筋力強化トレーニング、リハビリを兼ねたストレッチなど、保存的治療が中心となります。
頚椎後縦靭帯骨化症
頚椎後縦靱帯骨化症は、頚椎の椎体の後面を走っている後縦靱帯が骨化してしまう疾患です。肥厚増大化するにつれて脊髄を圧迫するようになり、様々な症状を引き起こします。原因については明らかになっていませんが、遺伝的要因などが考えられています。
頚椎後縦靭帯骨化症の症状は、圧迫される部分によって異なってきます。一般的には手足のしびれ、手足の知覚障害、腕の脱力感、歩行時の足のもつれ、排尿障害などが見られるようになります。
治療に関してですが、画像診断により靱帯骨化がみられるだけで特に症状が現れない場合は、積極的な治療は控えて経過観察を行います。但し、脊髄圧迫がみられ、進行性で日常生活に支障を来たすようになったときは手術が行われます。