脊椎の病気に対する治療
脊椎の病気に対する治療には、大きく保存的治療と外科的治療があります。保存的治療では、痛み止めの処方や神経ブロック注射、リハビリテーションなどを行い、外科的治療では手術を行います。
手術には大きく分けて、
- 神経の圧迫を取る「除圧」
- 背骨にずれがあった場合に行う「固定」
- 曲がっている背骨に行う「矯正」
の3つの方法があり、それらを症状などによって組み合わせることもあります。当院ではいずれの手術にも、院長・葛西自身が対応しています。
手術を受ける「ベストタイミング」とは
手術を受ける「ベストタイミング」を判断するのは簡単ではありませんが、「日常生活にどれだけ影響を及ぼしているか」が分かれ目です。
例えば保存的処置を受けなくても日常生活に問題なく、たまに症状が出る程度なら、脊柱管狭窄症があったとしても手術は不要です。しかし保存的治療を受けても症状の改善につながらず、休み休みでないと歩けないなどの場合は手術が必要です。
痛み・しびれがある以上、脊椎には負担がかかり続けています。放置すれば、それだけ神経の損傷も深刻化していきます。結果、手術をしても症状が残ってしまう場合があるのです。
したがって症状によっては、早期に手術を受けるメリットは非常に大きいと言えます。
「脊椎の手術」は怖くない

患者さんの中には「脊椎の手術をしたら車椅子になってしまう」というイメージを抱いている方も少なくありません。だからこそ強力な痛み止めがなければ生活できないような状態になっても打つ手がなく、諦めてしまっている方もおられます。
確かにかつての脊椎の手術は、リスクの高い治療でした。しかし、医療の進歩により、近年は安全かつ効果的な手術方法が確立されています。過度に怖がる必要はありません。
むしろ早い段階で手術を受け、日々の生活や旅行などを目一杯楽しんでいる患者さんはたくさんいます。首や腰の痛みやしびれでお困りの方は諦めずに、ぜひ一度当院までご相談いただければ幸いです。
当院で対応している脊椎の手術
横浜市中区の山下公園スパインクリニックでは、以下のような脊椎の手術を行っています。
頚椎椎弓形成術
頚椎椎弓形成術は、全身麻酔下で椎弓(頚椎の後方部)を切開し、人工の骨を挿入して脊柱管(脊髄が通る通路)を広げる手術です。
頚部脊柱管狭窄症や頚椎後縦靭帯骨化症などの患者さんに対して行われます。いくつかの術式がありますが、最も一般的に行われているのは片開き法です。首の後ろ側から皮膚を切開し、まず椎弓に付着している筋肉を剥がします。そして、もう一方の椎弓にも切れ込みを入れ、人工骨を埋入します。これによって脊柱管が広がりますので、神経が圧迫している状態を改善することが可能です。
概ね7~10日程度の入院が必要となり、その後は2~3か月ほど通院していただき、経過を見ていきます。
頚椎前方固定術
頚椎前方固定術では、首の前側から切開し、神経を圧迫している領域を治療します。脊椎手術の多くは後ろ側から行われるのですが、頚椎前方固定術は神経を圧迫している部位に近い前側からアプローチするため、原因となっている部分を直接取り除き、人工物を挿入することができます。
ただし首の前方には食道や頸動脈があるため、これらの器官が損傷するなどの合併症が起こるリスクがあります。頚椎前方固定術を行う際には、十分な手術実績を持つ専門医のもとで行うことをおすすめします。
入院期間は4~5日程度です。その後の経過にもよりますが、退院してから3~12か月ほど通院していただきます。
腰椎椎弓形成術
腰椎部分の椎弓を切除することによって神経の圧迫を和らげる手術です。腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアなどの患者さんに対してよく行われます。
腰椎椎弓形成術には、椎弓を広範囲にわたって切除して症状の改善を目指す「広範囲椎弓切除術」と、切除する部分を限定する「部分椎弓切除術」がありますので、患者さんの状態を見極めながら選択していきます。
入院期間は5~7日程度が中心ですが、広範囲椎弓切除術の場合は長めになったり、さらに椎間固定術を併用したりすることもあります。通院期間は概ね2~3か月となります。
後方椎体間固定術(TILF/PLIF)
後方椎体間固定術は、腰椎などの手術を行った後で、脊柱の安定性を確保するために行われます。
腰椎の手術などで痛みが取り除かれたとしても、そのままの状態では脊柱が安定していないことがあります。そのような場合に、椎間板を切除して充填物を入れ、スクリューやロットで椎体をがっちり固定させるのです。椎間板を摘出した後で固定させる「後方椎体固定術(PLIF)」と、片側の椎間関節を切除して椎間板を切除する「片側侵入による椎体間固定術(TLIF)」があります。
入院期間は10~12日程度で、その後も24か月(2年)ほど通院していただくケースが一般的です。
経皮的バルーン椎体後弯矯正術(BKP)
経皮的バルーン椎体後弯矯正術(BKP)は比較的新しい治療方法です。主として骨粗鬆症による椎体圧迫骨折の患者さんに行われます。
X線透視しながら患部の位置を確認し、小さな筒を椎体に挿入します。そして骨折している椎体内を修復し、形成された空間に骨セメントを注入して骨折部位を安定化させるわけです。これにより、比較的に低侵襲で痛みなどを取り除くことが可能です。
入院期間は2~3日程度で、一般的には通院期間も1~2か月ほどで済みます。
腰椎側方椎体間固定術(XLIF)
腰椎側方椎体間固定術は、まず初めに側腹部を切開し、比較的に安全かつ低侵襲で行う脊椎手術の1つです。
一般的な手術の場合、後方から椎弓を削って神経の圧迫を取り除き、さらに神経をよけて椎間板にケージ(スペーサー)を挿入する必要があります。しかし腰椎側方椎体間固定術ならば、骨を削る必要がなく、さらに従来よりも大きなケージを挿入することが可能です。そのため腰椎を安定化させやすく、神経の圧迫も解除しやすいのです。
入院期間は7~14日、通院期間は3~12か月程度です。
院長・葛西の手術実績
当院の院長・葛西は長年、脊椎外科医として知識・技術の研鑽に努めてきました。自身が執刀医として手術の現場に立った件数は、2024年12月時点で約5,000件(うち頚椎約900件、胸腰椎約4,100件)に上ります。
【年次別】手術件数 (手術別)
術式名 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 合計(※) | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
頚椎 | 前方固定術 | 25 | 24 | 22 | 14 | 12 | 19 | 20 | 21 | 20 | 14 | 10 | 243 |
椎弓形成術 | 80 | 42 | 38 | 72 | 79 | 110 | 53 | 40 | 23 | 17 | 31 | 680 | |
その他 | 2 | 1 | 3 | 1 | 1 | 2 | 1 | 13 | |||||
頚椎手術 小計 | 107 | 66 | 61 | 89 | 91 | 129 | 73 | 62 | 44 | 33 | 42 | 936 | |
胸椎 | 黄色靭帯手術 | 9 | 3 | 6 | 11 | 7 | 8 | 3 | 5 | 4 | 5 | 3 | 75 |
腰椎 | 脊椎固定術 (PLIF,TLIFXLIF,PPS等) |
132 | 122 | 98 | 142 | 120 | 107 | 83 | 111 | 118 | 156 | 151 | 1606 |
椎弓形成術 | 123 | 146 | 133 | 163 | 183 | 158 | 111 | 58 | 47 | 49 | 36 | 1568 | |
椎間板ヘルニア摘出術 | 20 | 14 | 16 | 11 | 19 | 59 | 14 | 7 | 15 | 18 | 10 | 275 | |
椎体形成術 (BKP等) |
29 | 20 | 22 | 34 | 37 | 56 | 51 | 74 | 66 | 46 | 28 | 495 | |
その他 | 8 | 12 | 12 | 19 | 8 | 4 | 1 | 6 | 8 | 3 | 14 | 134 | |
胸椎・腰椎 手術小計 |
321 | 317 | 287 | 380 | 374 | 392 | 263 | 261 | 258 | 277 | 242 | 4153 | |
頚椎・胸椎・腰椎 手術合計 |
428 | 383 | 348 | 469 | 465 | 521 | 336 | 323 | 302 | 310 | 284 | 5089 |
※2007年~2024年12月現在の合計になります。
【年次別】 手術件数 (疾患別)
術式名 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 合計(※) | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
頚椎 | 後縦靭帯骨化症 | 17 | 11 | 9 | 17 | 11 | 12 | 3 | 2 | 3 | 2 | 5 | 98 |
脊柱管狭窄症 | 74 | 37 | 38 | 60 | 70 | 90 | 54 | 32 | 20 | 15 | 26 | 608 | |
神経根症 | 3 | 2 | 8 | 4 | 3 | 4 | 24 | ||||||
椎間板ヘルニア | 14 | 18 | 13 | 9 | 10 | 24 | 14 | 18 | 16 | 11 | 6 | 192 | |
その他 (首下がり・脊髄損傷 等) |
2 | 1 | 3 | 2 | 1 | 2 | 1 | 14 | |||||
頚椎手術 小計 | 107 | 66 | 61 | 89 | 91 | 129 | 73 | 62 | 44 | 33 | 42 | 936 | |
胸椎 | 黄色靭帯手術 | 9 | 3 | 6 | 11 | 7 | 8 | 3 | 5 | 4 | 5 | 3 | 75 |
腰椎 | 椎間板ヘルニア | 20 | 38 | 16 | 11 | 19 | 68 | 18 | 12 | 20 | 33 | 16 | 355 |
脊柱管狭窄症・ 椎間孔狭窄症 (変性すべり症含む) |
240 | 210 | 209 | 281 | 274 | 230 | 173 | 154 | 141 | 151 | 118 | 2767 | |
分離(すべり)症 | 12 | 10 | 5 | 12 | 8 | 12 | 2 | 2 | 3 | 4 | 8 | 96 | |
変性側弯・脊柱後弯 等 | 3 | 24 | 17 | 12 | 21 | 14 | 15 | 8 | 16 | 25 | 49 | 215 | |
椎体骨折 (圧迫骨折・破裂骨折) |
29 | 20 | 22 | 34 | 37 | 56 | 51 | 74 | 66 | 55 | 34 | 510 | |
その他 | 8 | 12 | 12 | 19 | 8 | 4 | 1 | 6 | 8 | 4 | 14 | 135 | |
胸椎・腰椎 手術小計 |
321 | 317 | 287 | 380 | 374 | 392 | 263 | 261 | 258 | 277 | 242 | 4153 | |
頚椎・胸椎・腰椎 手術小計 |
428 | 383 | 348 | 469 | 465 | 521 | 336 | 323 | 302 | 310 | 284 | 5089 |
※2007年~2024年12月現在の合計になります。